片側顔面けいれんとは

 片側顔面けいれんとは顔の半分が自分の意志とは関係なくピクピクとけいれんする病気です。ふつう眼の周囲の眼輪筋のピクつきから始まり、次第に口の周囲の口輪筋、さらには顎の下の広頚筋まで広がります。最初は緊張したときなど時々みられる程度ですが、しだいにけいれんしている時間が長くなり、ひどくなると片目をつぶってしまい、まぶたを開けづらくなります。

 

片側顔面けいれんの原因、診断

 片側顔面けいれんの原因は脳幹部から顔面神経が出てすぐの部分に血管が当たり、圧迫することにより起こります。MRIの出現により下図のように顔面神経に当った血管を描出できるようになりました。

片側顔面けいれんの治療

 まずは抗けいれん薬の投与が行われる場合もありますが、あまり効かないことが多いようです。2000年以降、ボツリヌス毒素の局所注射が保険適応となり行われるようになりました。ボツリヌス毒素はからし蓮根による呼吸筋麻痺による死亡事故で昔、宮崎でも問題になりましたが、筋肉を麻痺させる作用があります。その作用を利用して顔面の筋肉を麻痺させ、けいれんを止めるものです。ただ、効果が3-4ヶ月しか持続しないため、3-4ヶ月おきの注射が必要です。完全に治すには手術が必要になります。

 

片側顔面けいれんの手術

 手術はけいれんしている側の耳の後で毛の生えている部分に、生え際に沿って6-7センチの切開を加え、頭蓋骨に500円玉大の穴を開けます。脳を覆っている硬膜を切開し小脳をよけ、脳幹部から顔面神経が出た部分に当っている血管を確認し、これを動かし、テフロン綿球やテープで血管を固定し、圧迫を解除するものです。90%くらいの患者さんでけいれんが消失します。合併症で問題になるのは同じ側の耳が聞こえにくくなることで、発生率は数パーセントです。入院期間は約1-2週間です。

術中写真です。顔面神経に当っている圧迫血管(左図)をよけ、テフロンテープを用いて血管が元の位置に戻らないように固定しています。

まとめ

 片側顔面けいれんは従来の抗てんかん薬投与に加え、ボツリヌス毒素の局所注射による治療が行われるようになっています。ただ、効果が数ヶ月しか持たないため、定期的な再治療が必要です。MRIで顔面神経を圧迫する血管が確認され、神経血管減圧術を行えば、90%以上の患者さんでけいれんは消失します。ただ、顔面神経は聴神経と平行に走行しており、聴神経は非常に脆弱な神経であるため、手術により手術した側の難聴が生じる危険性が数パーセントあるのがこの手術の難点といえるでしょう。