脳出血とは

 脳出血は高血圧を放置することによって起こる高血圧性脳出血が多くを占めます。以前は多くみられましたが、降圧剤の進歩と普及によりかなり減少してきています。

 

 高血圧を原因とする脳出血には好発部位があります。小さな出血は止血剤や出血周囲の脳の腫れを取る薬の点滴を行い、自然に吸収されるのを待ちますが、大きな出血になると手術で摘出しなければ助けられない場合もあります。脳出血を起こした部分の脳組織は壊れてしまっており、手術の目的は救命であって、手術をしても機能の回復は困難である場合が大部分です。出血した場所にもよりますが出血した側とは反対側の麻痺や感覚障害を残すことが多くみられます。

 

右の被殻というところの出血例の頭部CTです(向かって左の白い部分が出血です)。被殼という部位は高血圧性脳出血の最好発部位で約40%を占めます。この場所ですと反対側の左上下肢麻痺が出現します。このくらいの大きさの出血ですと手術せずに内科的治療、リハビリを行います。

 

 

同じく右被殻出血例のMRIです。さすがにこのくらいの大きさになると内科的治療では救命困難であるため開頭血腫除去術を施行しました。

 

 

 

 

術後CTです。血腫はきれいに取り除かれていますが、手足を動かす神経繊維の通り道が出血により破壊されており、左上下肢麻痺は残存しました。

右の視床というところの出血です。視床は感覚のセンターであるため、反対側の左上下肢の麻痺に加え、出血が吸収されたあとも感覚障害が残存し、左半身のジリジリとした痛みが残存することが多いです。

小脳の出血です。激しいめまい、嘔吐、頭痛で発症します。小脳は前方に脳幹部という生命維持に重要な組織があるため、急変すると呼吸が突然止まることがあり、このくらいの大きさになると手術が必要になります。

 

 

 

 

術後CTです。血腫はきれいに取り除かれています。小脳は比較的代償能が高く、めまい、ふらつきなどの小脳症状は次第に消えていくことが多いようです。

まとめ

 脳出血は発症するまでは無症状です。原因となる高血圧は塩分摂取量を減らしたり、体重を落としたり、運動したりすることによりある程度改善しますが、改善には限界があります。年齢が加わることにより動脈硬化が進行し、血圧は次第に上昇してきますので、早めに降圧剤内服を開始することが重要です。近年、脳出血が減少してきたのは降圧剤による血圧コントロールを受けている患者さんが増えてきたことによると考えられます。女性の場合、閉経までは女性ホルモンに守られていますが、閉経後に血圧が上昇してくることが多く、注意が必要です。